潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは、若いかたを中心として認められる、慢性的な大腸の粘膜をおかす自己免疫的な疾患であり、基本的には大腸の粘膜を異物、敵とみなして、攻撃してしまう、粘膜が火傷をきたすような病気であります。その原因はよくわかっていないために厚生省から難病申請されておりますが、発症の原因としては、明らかに精神的疲労の要素は否定できません。もちろん遺伝的素因も少なからず関与していると考えられますが、その発症には過度のストレスが大きく関与しているものと、わたくしは確信しております。生活のなかで、あなたを精神的に苦しめることが、最終的に大腸粘膜を傷つけてしまうという免疫異常のスイッチを、かちっといれてしまうようなものだと思っております。ちなみに、精神科や心療内科の本で心身症(心因性要素から機能性もしくは器質的障害を認める状態をいいます)の中に、実は潰瘍性大腸炎もふくまれており、その関与は明らかであります。もちろん、発症には感染性胃腸炎などの感染がきっかけとなることもあります。最終的に、わたくしは、この潰瘍性大腸炎は、粘血便、下痢、腹痛、発熱などの症状を伴い、内視鏡を行うと典型的な炎症性変化を認め、また、特徴的な病理組織的な結果を認めることから診断されるものですが、実はそれぞれに異なる病態が存在しており、潰瘍性大腸炎症候群という考え方が、疾患概念に一番適しているのではないかと思っております。そのために、治療法がしっかりと確立できないのではないかと考えております。ステロイドが非常に効果的は方もいれば、抗菌剤多剤併用などの治療法が効果を示すかたがいるのは、このためではないかと考えております。
症状
大腸粘膜が炎症をきたす病気であり、そのために粘液に混じった血便、下痢、腹痛、及び発熱を伴うことが多いです。最終的に栄養状態が悪化して、体重減少や倦怠感を伴うようになってきます。まれに、関節痛や皮膚症状など腸管とは関係のない場所に症状を伴うこともあります。
検査
基本的には、やはり大腸内視鏡検査が必須であります。特に、粘血便が長く続く状態がある場合は、直接、内視鏡でみることが重要です。当院では可能なかぎり、必要とされた場合は即日に検査を行うように心がけております。不安が続くと、それだけで一気に悪化する病気でもあるので、そうした対応をさせていただきたく思います。また、採血でもある程度状態の把握はできますが、相当状態が悪化しないかぎりは、炎症タンパクであるCRPや白血球は上昇せず、貧血も認められません。そんな中、現在、便中カルプロテクチンや採血でLRG(ロイシンリッチα2グリコプロテイン)という物質が測定可能となり、かなり病態をみることも可能となっております。どんどんと開発されている新たなものをもちいて、安心して加療が受けられるように努めていきたいと思います。
治療
基本的には、炎症を抑えることが主体となります。古くからは、基本薬として5-アミノサリチル酸という抗炎症剤が中心となっておりますが、この内服加療だけでは炎症の安定化がきびしいこともあり、ここに他の治療を追加していく形となります。
この5-アミノサリチル酸も様々な種類があるのですが、この薬は、基本的に炎症をきたす大腸粘膜に直接ふれて効果を示す薬なので、そのまま内服してしまうと、酸の影響で分解されて効果がなくなってしまうために、あらゆる方法をもちいて大腸まで届くように開発されています。そのため、最終的には大腸内における到達する濃度が高いものほど効果があるとされています。
潰瘍性大腸炎は、その炎症が直腸から連続性に口側の腸管に向かって炎症が波及する病態が基本であり、炎症が直腸やS状結腸及び下行結腸付近までの左側結腸までのタイプの場合は、前述した5-アミノサリチル酸製剤に局所治療である座薬や注腸療法を併用すると、高い効果を示すことがあります。ただし、それ以上の炎症が波及して全結腸に及んでしまう場合は、全身的な加療をほどこさないといけません。そのような場合は、以前ではステロイド治療しかない状態であったのですが、現在では顆粒球除去療法やバイオ製剤などが導入可能となってきております。細かく状態を把握して、そのかたにあった加療を選択して良い状態に導き、それを維持することが重要であると強く認識しております。特に、そのほかに加療としては、保険適応外ではありますが、抗菌剤多剤併用療法やシレイサンとよばれる漢方治療もありますので、そうした選択肢も十分理解して導入していきたいと思っています。こうした保険外の治療に関しては、そうした加療をよしとしない先生も多いのですが、基本的に苦しむかたが良い状態になることが本当に重要なことと考え、やれる加療はなんでもするというのが基本姿勢であります。
ただ、この病気の本質となる病態は、やはり精神的な要素が高く、その悪化には過度の不安が強く関与しておりますので、そうした面に対して特に全人的な加療をご提供したいと心から思っております。あなたの病気を少しでも良い状態に導いて、良い免疫状態になることにお力になれれば幸いです。
もちろん、炎症が非常に強く、全身状態がよくない場合はしっかりとした連携の下、紹介等行って入院加療ができるようにさせていただきたく思います。